『歴史の雑学を交えての観光ガイドをお願いしたいです』
 
 
馬鹿もんが。修学旅行ってなぁ、自主学習の実体験の場だろうが。こんな時にまで人に物教えて貰うつもりで、どうすんだ?
自分で事前に調べて、実際にその場を見聞することに意義があるんだろ。
……ったく。クソ真面目な教師みてぇなこと、俺に言わせるんじゃねぇ
 
 
『おごってください!』
 
 
甘えんな! 親のスネかじってる苦労知らずどもに、汗水垂らして稼いだ公務員の薄給からおごってやる筋合いなんぞねぇ!
そもそも自分の小遣いからやりくりすんのも修学旅行の勉強だろうが。

……って言っとかにゃ、クラス全員おごらにゃならんだろうが。
もう少し俺の立場考えろ
 
 
『観光デート!
で、引率の教師になっちゃって凹む兄様がみたいですw』
 
 
やれやれ……なにがかなしくて、むさいヒヨッコどもの面倒みなきゃならんのだ。お前さんだけならともかく、な。
おまけに学年の引率主任があのハゲ教頭ときちゃな。こりゃ、夜の酒も楽しめそうにないぜ……
 
 
『行き先が大阪だったら、
安倍晴明神社へ一緒に行って陰陽の勉強したい』
 
 
ああ? 晴明神社? パスだパス!
あそこにいくと宗家筋が、やれ見合いだなんだと、うるせぇからな。ったく。37で独り身なのがそんなにおかしいかよ?
 
 
『夜、皆にばれないように
就寝までの自由時間を一緒に過ごしたい』
 
 
おう、お前さんか。
自由時間に無茶しなかっただろうな? ならいい。
ふう……やれやれ。

あん? 疲れたに決まってんだろ。
なにが哀しくて、俺がこんな生活、続けにゃならんのだ…
 
 
『先生と二人で過ごせるならどこでもいい』
 
 
ま、こうしてお前さんが会いにくるだけ、マシだと思っておくかね。

……っと。ぼちぼち自由時間も終わりか。
ったく。ガキのお守りしてる時間はやたら長ぇくせに、こういう時間だけは短けぇんだからたまらんぜ。

しゃーねー。
気は乗らねぇが、野郎どもの点呼に行ってくるとすっか。

お前さんは別の部屋で日下先生に“看病されてる”ことにしていくからな。看病だなんだとかいう野郎なんぞ、部屋に入れんじゃねぇぞ? いいな?

……わかりゃいいんだ。それじゃお休み、お姫様